アトリエ イングローズから、年の始まりのご挨拶
新しい年が静かに幕を開けました。
今年も、花とともに心豊かな時間をお届けしてまいります。
本年もどうぞよろしくお願いいたします
目次
1月という月は、「立ち止まること」を許してくれる月
年が明けると、自然と気持ちは前を向きます。
新しいカレンダー、新しい予定、新しい目標。
「今年こそは」「今度こそは」と、
何かを始めなければならないような気持ちになる方も多いのではないでしょうか。
けれど、1月は本来、とても静かな月です。
外の景色は冬の色に包まれ、植物たちは芽吹く準備をしながら、
土の中でじっと力を蓄えています。
本当は人も同じで、
すぐに走り出さなくてもいい時期なのだと思います。
一度立ち止まり、深呼吸をして、
これまでの一年をそっと振り返る。
そして、「これから」を思い描く前に、
「今の自分」を感じてみる。
1月は、そんな時間を持つことを
自然がそっと後押ししてくれる月なのかもしれません。
忙しさの中で、いつの間にか置き去りにしてきたもの
「自分のことは後でいい」と思い続けてきた時間
日々の暮らしは、思っている以上に慌ただしいものです。
家族の予定に合わせ、仕事に追われ、
気がつけば一日が終わっている。
「今日は自分の時間を取ろう」と思っていても、
結局その時間は誰かのために使われ、
自分のことはまた次へと後回しになる。
それを繰り返すうちに、
「自分のための時間」を持つこと自体に、
どこか遠慮や罪悪感を覚えるようになってしまった方も
少なくないのではないでしょうか。
けれど本当は、
自分を大切にすることと、
誰かを大切にすることは、
決して相反するものではありません。
ただ、そのことを思い出すきっかけが、
忙しさの中で見えにくくなっているだけなのだと思います。
好きだったはずのことを、忘れてしまった感覚
「昔は、花を見るのが好きだったんです」
アトリエでは、そんな言葉を耳にすることがあります。
嫌いになったわけではない。
興味がなくなったわけでもない。
ただ、暮らしの優先順位の中で、
少しずつ後ろへと下がっていっただけ。
忙しい毎日の中では、
心が動く瞬間よりも、
やらなければならないことが先に立ちます。
そうしているうちに、
「何が好きだったのか」
「何に心が動いていたのか」
その感覚自体が、
少し曖昧になっていくこともあります。
でも、それは消えてしまったわけではありません。
ただ静かに、
心の奥で待っているだけなのです。
何も考えず、ただ感じる時間の不足
現代の暮らしは、
常に「考えること」に囲まれています。
次は何をするべきか。
これは正しい選択なのか。
無駄にならないだろうか。
そんな問いが、
無意識のうちに頭の中を巡っています。
だからこそ、
「何も考えずに、ただ感じる時間」は
とても貴重になっています。
花に触れる時間は、
その数少ない機会のひとつです。
美しいと感じる。
心地よいと感じる。
少し落ち着くと感じる。
理由を言葉にしなくてもいい。
説明できなくてもいい。
そうした感覚を、
もう一度自分に取り戻してあげることが、
これからの時間を
より豊かにしてくれるのだと思います。
花と向き合う時間が、心に起こす小さな変化
正解を探さなくていい時間
フラワーアレンジメントの時間は、
日常とは少し違った流れの中にあります。
「うまく作らなければ」
「失敗したらどうしよう」
最初はそんな思いが浮かぶ方もいらっしゃいます。
けれど、花に正解はありません。
同じ花材を使っても、
仕上がりは一つとして同じにならない。
それぞれの手の動きや感覚が、
そのまま形に表れていきます。
誰かと比べる必要も、
評価される必要もありません。
ただ花と向き合い、
「今、どう感じているか」を
そのまま受け取る時間。
その感覚に慣れてくると、
自然と肩の力が抜け、
心が静まっていくのを感じる方が多いのです。
手を動かすことで、心が整っていく
花を活ける時間は、
頭で考えるというよりも、
手を動かすことで心が整っていく時間です。
茎を切る音、
花を手に取ったときの感触、
花器に花を入れた瞬間の空気の変化。
五感を使いながら作業をしていると、
いつの間にか思考が静まり、
「今ここ」に意識が戻ってきます。
忙しい日常では、
過去や未来のことを考える時間が多くなりがちですが、
花と向き合う時間は、
自然と現在に引き戻してくれます。
それは、
自分自身を整えるための、
とても穏やかでやさしい方法なのかもしれません。
冬の花が教えてくれる、1月の過ごし方
華やかさよりも、静けさに宿る美しさ
冬の花は、春や夏の花のように
一目で心を奪う華やかさを持っているわけではありません。
けれど、その佇まいには、
静かな強さと凛とした美しさがあります。
色合いは控えめで、
形もどこか慎ましい。
それでも、空間に置かれた瞬間、
不思議とその場の空気が整っていく。
それは、
「目立たなくてもいい」
「無理に主張しなくてもいい」
という、冬の花からのメッセージのようにも感じられます。
1月は、新しい目標や決意が注目されやすい時期ですが、
すべてを声高に掲げなくてもいいのだと思います。
静かな気持ちで、自分の内側に目を向ける。
そんな過ごし方も、
立派な一年の始まりです。
すぐに咲かなくても、準備している時間がある
冬の植物たちは、
表に見える変化が少ない分、
土の中で確実に力を蓄えています。
芽が出ていなくても、
成長が止まっているわけではありません。
次の季節に向けて、
必要な準備を静かに進めています。
人も同じで、
すぐに結果が出なくても、
何もしていないわけではありません。
1月は、
何かを成し遂げる月ではなく、
これからの自分を支えるための
「土台」を整える月。
焦らず、比べず、
今は準備の時間なのだと受け止めることで、
心がふっと軽くなることもあります。
余白を大切にすることで、心に風が通る
冬の花のアレンジメントには、
余白が欠かせません。
花を詰め込みすぎず、
空間を残すことで、
一つひとつの花が
より美しく引き立ちます。
この「余白」は、
暮らしや心にもよく似ています。
予定を詰め込みすぎず、
何もしない時間を許す。
考えすぎない瞬間を持つ。
そうした余白があるからこそ、
気持ちに風が通り、
次の一歩が自然と見えてくるのです。
1月は、
その余白を意識的に作るのに
とても適した月。
冬の花は、
そのことを静かに、
でも確かに教えてくれています。
アトリエ イングローズが大切にしていること
アトリエ イングローズは、
「上手に作る場所」ではありません。
花を通して、
自分自身と向き合う時間を持ち、
日常の中に、
ほんの少しの余白を取り戻していく。
そんな時間を大切にしています。
誰かのために頑張ってきた方が、
自分の心にも
そっと目を向けられるように。
花のある時間が、
暮らしの中で
静かに息づいていくことを願っています。
おわりに ~花とともに迎える、新しい一年~
新しい年の始まりに、
どんな時間を自分に贈りたいかを考えることは、
これからの一年の過ごし方を
静かに整えることでもあります。
頑張ること、前に進むこと、
何かを成し遂げることだけが
「良い一年」ではありません。
立ち止まること、
深呼吸をすること、
心が動く瞬間に気づくこと。
そうした小さな積み重ねが、
気がつけば暮らしの質を変え、
一年後の自分を支えてくれるのだと思います。
花と向き合う時間は、
そんな感覚を思い出させてくれます。
うまく言葉にできなくても、
形にならなくても、
ただ「心地よい」と感じるだけでいい。
花の前では、
自分をよく見せる必要も、
誰かと比べる必要もありません。
1月という静かな季節に、
花とともに過ごすひとときは、
これからの自分への
やさしい贈りものになります。
今年もまた、
花のある時間が、
日々の暮らしの中で
そっと心を支える存在でありますように。

